本日、福岡高裁で開かれたよみがえれ!有明訴訟の口頭弁論における漁業者平方宣清さんの意見陳述を紹介します

1 開門を求める裁判を起こして15年が経とうとしています。
裁判を始めて10年目、平成22年12月に福岡高裁で開門を認める判決が出て確定したとき、私も仲間も「長く続いた苦しみがようやく終わる」「有明海は再生できる」と期待しました。国が始めた諫早湾干拓事業は、大金を無駄につぎ込んだあげく、海を汚し、何人もの仲間を死に追い込み、私たち漁業者の暮らしを壊しました。福岡高裁の確定判決は、多くのものを失い、そして失いつつある私たちの希望でした。
まさか、その後、国が確定判決を守らず、こんなに無駄な裁判を次々と起こしていくなど思いませんでした。
2 この裁判の間にも、有明海の状態はどんどん悪くなっていきます。
今、カニも魚もアサリもほとんど獲れません。イイダコはわずかに獲れますが、それでも締切り前の全盛期の3分の1以下です。太良町は竹崎ガニが名物で、カニや海産物を提供する旅館や直売所が多くありますが、漁獲量が少ないために流通量が不足しています。わずかに獲れているカニのサイズも、締切り前であれば700〜800グラムのサイズがたくさん獲れていたのに、今では大きくても500グラムです。
仲間からは、海に出ても、網を数回も海に入れればドロドロとしたヘドロ状のものがこびりついてしまって漁にならないという話を聞きます。漁業者の生活はますます悪くなり、子ども達に後を継がせることができません。魚が獲れないので漁業者は家族と離れて出稼ぎに行かざるを得ません。組合には新しい組合員が入ってこず、締切り前までは約400人いた組合員が、今では230名くらいしかいません。一番若い組合員も45歳で、このままいけば、あと2、30年で組合が消滅するかもしれません。
3 私たちは、漁業も農業も防災も成り立つ開門方法を提案しています。国が本気になれば、必ずできるはずです。それなのに、国は、長崎県の反発があるからなどと言って、あえて対策をとろうとしません。私たちに対して間接強制金を支払い、国民に対しては「長崎県が反発しているから」と説明しているのは騙しです。多くの国民を欺く国に対して、強い怒りを感じます。
農水省は漁民を守るための省なのに、なぜ、このような無駄な裁判を続け、漁民を苦しめ続けるのでしょうか。私は、これまで、100回近く農水省交渉を行ってきました。その度に感じるのは、農水省が漁民の苦しい生活や海の状況のことなど聞く耳持たないということです。農水省は、諫早湾干拓は有明海異変の原因ではないと断言します。潮受け堤防閉め切り後から赤潮の異常発生が起こっているのに、なぜ断言できるのか、私には全く理解できません。また、原因を明らかにするために判決で開門調査を命じられたのに、それを拒絶することも全く理解できません。
法治国家である以上、国は、確定判決に従って1日も早く開門すべきです。
4 最後に
今開門すれば、まだ間に合います。海の回復力はすさまじいものがあります。
平成14年の短期開門調査のとき、わずか27日間の開門でしたが、翌年はタイラギが立ち、アサリも採れました。開門すれば絶対に海は回復するとの確信があります。
海が再生すれば、出稼ぎに行っている人たちも帰ってきます。家族と一緒に暮らせるようになります。子ども達も後を継いでくれるようになり、町は必ず以前の活気を取り戻せます。
最初に述べたように、私たちの裁判は15年も続いています。経済的に困窮している私たちが15年間も裁判を続けて来られたのは、多くの方々が私たちと同じ希望を持ち、支え続けてくれたからです。私たち数十名の漁業者だけが開門を求めているのではありません。私たち開門を求める漁民には、多くの国民がともにいます。開門は多くの国民の願いでもあります。
この争いを早く終わらせ、有明海、そして有明海域の漁民の生活を再生するために、裁判所が国を厳しく断罪してくれることを期待しています。