私は、警固中学校PTA会長として学校に入った時、学校があまりにも社会と隔絶された閉じた社会であることに驚かされました。今の世にこんな人権無視の治外法権な社会があるのかと。

それこそ学校の常識は校門を一歩出れば非常識だし、生徒の胸にガムテを貼ったり、上靴を忘れた生徒にスリッパを貸さないなど、常識はずれどころか、弁護士の目からするともはや犯罪と言わざるを得ないものです。


私がPTA会長時代、少しでも生徒のストレスを減らしたいと思って取り組んだのが学生服のジェンダーフリー化です。当初は警固中だけの取り組みでしたが今では福岡市内の全公立中学校に広がりました。


私は、PTA会長を退任した今も弁護士として校則問題や学校トラブルに関与していますが、その際、生徒側の要求を一方的に学校につきつけるのではなく、どうしたら生徒が学校において円滑に学習ができるのかを学校と話し合い調整し当該生徒および他の生徒にとってもよりよい学習環境を整えることができればと考え臨んでいます。

校則をすべての生徒に等しく適用し、すべての生徒に対して同じように指導をするというのは、組織の中での不公平感をなくすという意味では、決して間違ったことではないと思います。しかし、生徒一人ひとりに違った個性がある中で、ある生徒にとって、校則を不合理であると感じたり、不合理な校則を適用されることについて強いストレスや抵抗を覚えることもあります。一人ひとりの個性の尊重が求められる時代に、少数の生徒に我慢やストレスを与えてまでも全生徒の画一性を追求することに教育的意義があるとは思えません。必要なことは、校則違反についての杓子定規な対応ではなく、当該生徒がなぜ校則に対して不合理に感じているのか、その声に真摯に耳を傾け、校則や生徒指導に対する生徒の不合理感やストレスを軽減するために学校として何ができるのかを一緒に考えていく姿勢だと思います.

他の生徒との関係で示しがつかないといったことや、他校との足並みを揃える必要があるといった回答は何の意味もないばかりか、かえって教員への不信感を強くさせるものです。他校との足並み云々というのは、その言葉を聞いた生徒からすると、先生たちは生徒には、自分の頭で考えろ、他の人がやらなくても自分から率先してやれと指導するのに、先生たちは自分の頭で考えることもしないし、人がやらないと自分からはやろうとしないという教員に対する不信感を植え付ける結果にしかならないものです。たとえ、他校では取り組みがはじまっていなくとも、我が校では生徒達のことを考え、率先して、生徒の声に耳を傾け、校則の見直しをはじめるといった姿勢を示すことが信頼関係構築の第一歩ではないかと思います。

今のままの校則や生活指導でよいのかといった疑問を教員の中でも共有し、校則について疑問を持っている生徒の意見を聞いてみようといった姿勢を示すことが大事なのではないかと考えます。

多少厳しい意見に聞こえるかもしれませんが、それ程、今の中学校は社会から隔絶され、一般社会では通用しない独自の価値観に縛られているということです。

市民の意見を受け、2021年、福岡市校長会は「よりよい校則を目指して」を発表しました。不十分ではあるものの、校則見直し、学校正常化の大きな一歩です。

それなのに、このガイドラインを知っているPTA会長がどれだけいるでしょうか。このガイドラインを根拠に学校に校則検討委員会の設置や校則のホームページ公開を求めたPTAがどれだけあるでしょうか。そんなこともせずにただ学校の下請けばかりしているからPTAはいらないなんて言われるんです。

そればかりか、PTAに加入しないことで、保護者や生徒が不利益やいじめを受けるという事件が多発しています。

私達には、ある組織に所属したり所属しないことを自分の意思で決める「結社の自由」が憲法上保障されています(憲法21条1項)。

結社の自由が、憲法上重要な人権として保障されている以上、弁護士会など憲法や法令で加入が要請されている特別な場合を除いて、あらゆる組織は任意加入を前提としており、組織への加入を強制することは人権侵害として許されません。

PTAも当然のことながら任意加入団体であり、学校に子どもを通わせる保護者が当然に加入しなければならないものではありません。

PTA会長や役員は、このことを当然に認識し理解しているはずです。おそらく、自治体のPTA連合会においても、PTA任意加入に関するガイドラインが作成され、研修などによって各校PTA役員らに周知徹底されていることでしょう。

それにも関わらず、未だに任意加入団体であることや、必ずしも加入する必要はないことなどの説明すらせぬまま、入学した生徒の保護者を自動的に加入させるPTAが存在します。

このようなやり方は明白な人権侵害であるばかりか、「知らなかった」では済まされない悪質な行為であり、PTA会長の法的責任が問われてもおかしくない事態といえます。

そもそも、人権を擁護すべきPTAが率先して保護者の人権を侵害しているという認識をPTA会長や役員は持つべきだと思います。

また、PTAに加入するか否かは保護者の自由な意思によるものであり、PTAや学校の了承が必要なものではありません。

保護者がPTA非加入届を提出したにも関わらず、非加入についてPTAの了承が必要とすることは、実質的に加入を強制するものであり、明白な人権侵害であると言わざるを得ません。

また、入学時や運動会、卒業式等の際の記念品などをPTA非加入家庭の生徒に配らない、非加入家庭の生徒を登校班に入れないということは生徒の間に分断を生むものであり生徒の健全育成を目的とするPTAとして絶対にやってはならないことです。

これらはPTAとしてやってはいけないことの典型例としてガイドラインや研修などで繰り返し指摘されてきたものです。

そもそも、加入者の生徒と非加入者の生徒との間に分断や差別が生むような事業をPTAが行うべきではありません。

私もPTA会長をしていましたが、その間、非加入の保護者も当然ながらいました。だからといって、非加入の保護者や生徒に不利益を課したり、非加入者から実費を徴収しようといった発想すら思い浮かびませんでした。

また、学校の予算で賄えない分をPTAが補完するという役割を強調する方もいますが、それは学校予算が不十分であることが問題であって、PTAが補完して解決するものではありません。PTA連合会や市議会、県議会を通じて、十分な学校予算を確保するよう働きかけをすることこそ、PTAに求められる行動です。

非加入を理由に保護者や生徒に対して、不利益や差別を助長するような言動を行うことは厳に慎むべきですし、不利益をちらつかせて加入を強制することは、かえって保護者の反発を招く結果となってしまいます。むしろ、任意加入を徹底しても、なお加入してもらえるような魅力的なPTA活動を模索することこそ、これからのPTAに求められていることだと考えます。

警固中PTAのように、PTAが中心となって学生服やカバンを変更したり、校則を見直すなど、本来、PTAは子どもたちが安心して勉強できる環境を作るための主体的役割を果たすことが可能な組織です。

PTAがより魅力的な組織となることを願ってやみません。