自民党漫画政策パンフ「ほのぼの一家の憲法改正ってなあに?」を読んでterra cafeの参加者から出た意見。時間が短かったので、この程度しか出ませんでしたが、この漫画ツッコミどころ満載です。良くこんなレベルのものを恥ずかしげもなく政権与党が出版しましたね。もはやカルトレベルです。
自民党漫画政策パンフ「ほのぼの一家の憲法改正ってなあに?」
・戦争にもっとも反対するであろう子を持つ主婦層を狙った体裁に、自民党の本気度が垣間見える。
・家族の中でただ一人の女性である優子の心配性を男たちが宥めるという構図に、何も分かっていない女性に男性たちがモノを教えてあげるといった男女感、家族感が見える。
・憲法について調べる動機が「お母さんを安心させるため』として、お母さんの不安が根拠のないものであるかのように扱っている。
・優子は「憲法が改正されそうなことに不安感」をおぼえていたはずなのに、その3頁後には「現行憲法が今の時代とかけ離れていること」に対する不安感にすり替えられている。
・インターネットや携帯もない時代に作られたという理由で、憲法に不安を感じているが、憲法の中身については見てもいない。
・憲法の話をしている時に飛び出す優子のセリフ「スマホなしじゃスマ友に相談もできない」「ランチのお店も調べらんない」「エコとロハスは女の必須事項です」。主婦層が考えているのはこの程度だと自民党が考えているのであれば、女性を馬鹿にしすぎ。
・「プライバシー」「環境問題についても書かれていないなんて」→幸福追求権として憲法13条で保障されているという憲法を勉強したものなら誰もが知っている当たり前の事を伏せている。
・「今の憲法ってエコじゃないのね」→憲法がエコじゃないのではなく、政権を担っている自民党がエコじゃないだけ。憲法に環境権が明記されたら、自民党は、辺野古の埋立をやめ、諫早湾を開門し、原発を廃炉にするのか。するわけがない。
・「翔太の未来を考えるとやっぱり環境問題は大事だよな」→環境破壊をしているのは自民党政権なのに、よくこんなセリフが言えるもんだ。
・携帯もスマホもない時代の憲法であることに不安を覚えているくせに、携帯もスマホも使えない世代であるおじいちゃんの言葉は絶対視することの矛盾に、自民党が望む家族間が見える。
・憲法制定過程について、GHQに松本案が突き返されたことの屈辱だけが強調されているが、なぜ松本案がGHQに受け入れがたいものだったのか、松本案の中身については一切触れていない。
・憲法は、国家権力を縛り付けるものだという近代国家の大原則を隠して、国民が守らなければならない決まり事であるかのような嘘を強調している。
・人権の調整原理である「公共の福祉」を「公益」と置き換えているが、明確な嘘。180度違う。公益を根拠に人権を制限するのは自民党の憲法改正草案。
・国民は我慢しなくてはいけない。それを憲法は求めているという嘘。
・緊急事態の規定がないから、地震に対処できないと言うが、緊急事態の規定があれば、汚染水は止められたのか、福島第一原発事故は防げたのか。汚染水は完全にコントロール出来ていると明言し事実を直視しない安部総理の姿勢こそが地震などに適切に対処できない原因ではないか。
・緊急事態宣言が何を意味するかについて一切の説明なし。緊急自体宣言が戒厳令(戦前の非常大権)を意味し、憲法を停止し、全ての権力を内閣総理大臣に集中させるいわば独裁を意味することには触れていない。
・「明日どっかの国が攻めてきたらどうする」と仮定の設問で、戦争の必要性を説いているが、リアリティが全くない。
・「明日どっかの国が攻めてきた」場合のために個別的自衛権があるのに、それすらもないかのような印象を与えて、場面が異なる集団的自衛権が必要であるかのようなイメージを与えかねない。
・自衛隊について「苦しい解釈じゃのう」と言っているが、このような解釈で自衛隊を合憲だとしてきたのは自民党自身。
・軍人の暴走を許さないための「シビリアンコントロール」なのに「それじゃ政治家が権力を握っちゃうじゃん」とシビリアンコントロールが良くないかのような印象を与える発言。軍部の独走を止めることができなかった戦前の反省に対する言及がなく、これでは、軍人が軍隊を管理すべきだとの印象を与える。
・憲法18条に「意に反する苦役に服させられない」とあるので翔ちゃんが徴兵される心配はないと結論づけ、「誰かが兵隊になるのは変わりゃせん」と遠い目をしてつぶやいているが、なぜこの家族はわが子は自衛隊員になることはないと言い切っているのか。自衛隊に入るのはわが家とは別の世界の人という認識はどこから来るのか。
・ドイツが60回も憲法改正をして、日本が1度もしていないことを「ズルイ」と言うが、なぜ憲法改正をしたドイツを羨むのか。ドイツがなぜ改正をしなければならなかったのか(例えば、東西ドイツの統合など)について一切触れないまま「ズルイ」で済ませている。
・ドイツをはじめ他の国も憲法改正の要件が厳しい硬性憲法であるのに、日本だけが世界中で突出して厳しい条件を課せられているという誤った印象をあたえる。
・「翔太の世代にまで戦後を引っ張るわけにはいかない』→翔太の時代が「戦前」になるのを求めているのか。「日本を取り戻す」というのは「大日本帝国」の時代を取り戻すということではないか。
・「翔太の未来のためにも大人の私たちが考えなきゃね」というのなら逆の結論になるのではないか。
・「翔太の未来のため」と言いながら、憲法改正の最大の理由が「敗戦国」日本からの脱却という国から目線。