「結婚の自由をすべての人に」福岡地裁判決についての弁護団声明
2023年6月8日
「結婚の自由をすべての人に」訴訟九州弁護団
「結婚の自由をすべての人に」訴訟全国弁護団連絡会
福岡地方裁判所第6民事部(裁判長裁判官上田洋幸、裁判官橋口佳典、同馬渡万紀子)は、 本日、「結婚の自由をすべての人に」九州訴訟について、同性カップルに対し婚姻制度による 利益を一切認めず、自らの選んだ相手と法的に家族になる手段を与えていない本件諸規定は、 憲法24条2項に違反する状態にあるとの違憲判断を下し、国はこの状態を解消する立法措置に着手すべきとした。
各地の「結婚の自由をすべての人に」訴訟のうち、大阪を除く札幌、東京、名古屋の各地裁 に続く、4件目の違憲判決である。
2 「結婚の自由をすべての人に」訴訟とは
「結婚の自由をすべての人に」訴訟は、法律上の性別が同性である相手との婚姻を望む原告らが、婚姻を異性間のものに限り同性間の婚姻を認めていない民法及び戸籍法の諸規定(以下 「本件諸規定」という。)は、憲法13条や憲法24条1項の保障する婚姻の自由を侵害し、 また、憲法14条1項の保障する法の下の平等に反する不合理な差別であって違憲であるなど として、憲法に違反する本件諸規定の改廃を怠った国に対し、婚姻することができないことによって被った精神的な損害の賠償を求める訴訟である。
本訴訟は、全国5地域の裁判所に提起され、現在、札幌高裁、東京高裁(東京一次訴訟)、 東京地裁(東京二次訴訟)、大阪高裁、福岡地裁で訴訟が係属している。
これまでに、2021年3月17日に札幌地裁で違憲判決(憲法14条違反との判断)、2 022年6月20日に大阪地裁で合憲判決、同年11月30日に東京地裁で違憲判決(憲法2 4条2項に違反する状態にあるとの判断)、2023年5月30日に名古屋地裁で違憲判決 (憲法24条2項及び14条1項に違反との判断)が言い渡されており、本件が5件目の判決 となった。
九州訴訟では、福岡地裁に対し、法律上男性どうしのカップルである4名の原告ら及び法律 上女性どうしのカップルである2名の原告らが、 本件諸規定の違憲性を訴えており、今回、上記のとおり、憲法24条2項に違反する状態との判断が示された。
3 判決の概要
本日の福岡地裁判決(以下「本判決」という。)は、本件諸規定は、憲法24条2項に違反する状態にあるとの判断を下した。
本判決は、まず、永続的な精神的及び肉体的結合の相手を選び、家族として公証する制度 は、現行法上婚姻制度しか存在せず、婚姻により、公的にも、事実上も、種々の権利利益を享受することができることを指摘した。そして、婚姻をするかしないか及び誰と婚姻して家族を形成するかを自己の意思で決定することは同性愛者にとっても尊重されるべき人格的利益であ ることを指摘し、同性愛者において、これらの利益を受けるための婚姻ができないことは看過しがたい不利益であると認め、原告らはその人格的利益を侵害されている事態に至っていることを認めた。
その上で、婚姻制度の実態や婚姻に対する社会通念が変遷し、同性婚に対する国民の理解が 相当程度浸透していることもふまえると、同性カップルに婚姻制度によって得られる利益を一切認めず、自分が選んだ相手と法的に家族になる手段を与えていない本件諸規定は、憲法24 条2項に違反する状態であると断じた。
他方で、同性間の婚姻を認めていない本件諸規定が国会の裁量権の範囲を逸脱しているとは認めず、国家賠償法上違法とはいえないとして、原告らの請求を棄却した。
4 本判決の意義
本判決は、憲法における「婚姻」に同性間の婚姻を含む余地があることを明確に認めたうえで、婚姻制度により受けられる公的・事実的利益の一切を享受できないことが重要な人格的利益の侵害であるとし、同性カップルがこうした利益を一切受けることができず、自ら選んだ相手と家族になることができない本件諸規定は憲法24条2項に違反する状態にあるとして、違憲と判断した点で高く評価できるものである。さらに、国に対して、この違憲状態を解消する措置に着手すべきと明確に要請した点も評価できる。
何よりも、本判決は、札幌地裁判決、東京地裁判決、名古屋地裁判決に続く違憲判決であり、「結婚の自由をすべての人に」訴訟では、これまでに5件の判決が出され、そのうち4件 で違憲の判断がなされたことになる。さらに、結論として合憲と判示した大阪地裁判決も、立法不作為が将来的に違憲となる可能性があることを指摘している。
こうした一連の判決の流れは、司法が国会に対し立法での対応を強く要請しているものであ り、国会は、もはや現状を放置することは到底許されないという点を強く自覚し、本件諸規定の改正に直ちに着手しなければならない。
5 最後に
全国の「結婚の自由をすべての人に」訴訟の最初の一斉提訴(2019年2月14日)からの4年4ヶ月の間、この裁判を応援する方々と対話する機会が多くあった。その方々の中には、将来に希望が持てずに別れを選ばざるをえなかった人、愛するパートナーとの間に子をも うけることを諦めた人、法律上は「他人」とされたまま死に別れた人等、婚姻制度がないがために、取り返しのつかない甚大な不利益を被った当事者たちがいた。今回違憲判決が得られたのは、原告らのみならずそういった方々の悲痛な思い、そして「このような思いは二度と味わいたくない」という切なる願いが裁判所に伝わったからに他ならない。改めて、この裁判を支援していただいたすべての人々に感謝申し上げたい。
「結婚の自由をすべての人に」訴訟においては、5つの判決のうち、4つにおいて違憲判断 が下されている。本判決では、「本件諸規定は、憲法24条2項に反する状態にあり、立法者 としてはこの状態を解消する措置に着手すべき」とも判示している。国は、この司法からの厳しいメッセージを真摯に受け止め、これまでのように「慎重な検討を要する」との空虚な姿勢を繰り返すのではなく、直ちに婚姻の自由と平等の実現のために法制化に着手すべきである。
我々弁護団は、結婚の自由と平等の実現を願うすべての人と連携し、結婚の自由と平等が真に実現する日まで、共に力を尽くす決意である。引き続き、さらなるご支援をいただきたい。
以上
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