提訴声明
2024年(令和6年)3月6日
弁護士 後藤富和
本日、福岡市内の公立中学校に通う中学1年生と保護者が、福岡市を被告とした損害賠償請求訴訟を提訴した。事件の概要は後記【事件の概要】のとおりである。
教師の理不尽な指導(叱責、暴言、暴行など)によって児童生徒が傷つけられる事件が福岡市の公立小中学校で多発している。中には、本件のように、教師の誤解によって何ら責任のない児童生徒に対して理不尽な指導が行われるケースも少なくない(もっとも仮に児童生徒の側に何らかの責任があったとしても、暴言、暴行、長時間の叱責などの理不尽な生徒指導は許されない)。
本件を含め多くの事件において、加害行為後、教師から当該児童生徒に対して、口止めが行われている。
本来学校は児童生徒が安心して勉強することができる場所でなければならない。
しかし、現実には、いつ誰が教師の理不尽な指導のターゲットになるか分からない状況に置かれている。
しかも、理不尽な指導をした教師が処分を受けることは稀で、本件も含め多くの事件では、被害を受けた児童生徒が学校に登校することができなくなり、教育を受ける権利を侵害される結果となっている。
今回、原告らは、もう二度と、教師の理不尽な指導によって傷つく児童生徒が出ないように、勇気を振り絞り、裁判に訴えることを決意したものである。
アンガーマネジメントができない教師が感情のコントロールができずに児童生徒に対して理不尽な指導を行う背景として、教員のストレスや職場環境の問題もあると思われる。だからといって、児童生徒の人格を否定し、教育を受ける権利を侵害して良いことにはならない。
本提訴を契機に、福岡市の公立小中学校において、教師の理不尽な指導が根絶することを願ってやまない。
以上
【事件の概要】
2023年(令和5年)10月27日、福岡市立警固中学校の教室において、5時限目が始まる前の授業準備時間の際、原告生徒は、同人の机の上に「招待状」と書かれ三つ折りにされたチラシのようなものが置かれていることに気づいた。なお、チラシの内容は外形からは判別できないものであった。
原告生徒は、チラシの表面に「招待状」と印字してあることから大切な書類だと思い、このチラシを落とし物として教卓に持っていった。なお、原告生徒は、チラシの内容を把握していない。
すると、教卓で授業準備をしていた加害教諭は、チラシを見た瞬間に激昂し、突然、自席に戻ろうと後ろを向いた原告生徒の首を掴み、教室から廊下に引きずり出し、そのまま、同人を他の生徒や教師たちの目につかない階段の踊り場につれていき、同人の体をその場に放り投げた。そのため、原告生徒は踊り場の床に倒れた。加害教諭は、床に倒れたままの原告生徒を大声で怒鳴りつけた。
原告生徒は、何で叱られているのか理解できなかったが、チラシがきっかけとなって加害教諭が激昂したことから、原告生徒に対して、自分はチラシとは無関係であり、単に落とし物として届け出ただけであることなどを加害教諭に説明しようとしたが、加害教諭は一切聞き入れなかった。
加害教諭は、授業をせずにおよそ30分間にわたり、原告生徒に対して、「ふざけてんのか」、「謝るのが普通だろ」、「どうやって責任を取るんだ」、「クラスメイトの成績を下げるかお前の成績を下げるか選べ」などと大声で説教を続けた。
原告生徒は、加害教諭の要求が理不尽であるものの、長時間にわたり大声での説教を受け、自分が謝罪しなければクラス全員の成績を下げられることから、泣きながら頭を下げて加害教諭に謝罪をした。
それでも加害教諭の怒りは収まらず、授業ができなかった責任を原告生徒のせいにして、原告生徒に対し、「お前が授業しろ」、「授業してとお願いしろ」と要求した。
そこで、原告生徒は、加害教諭に頭を下げて「授業をしてください」とお願いをしなければならなかった。
さらに、加害教諭は、原告生徒に「親には言うな」と口止めをした。
原告生徒の帰宅後、原告生徒の異変に気づいた原告保護者が、原告生徒に問いただしたことで、本件が原告保護者に知れることとなった。原告保護者が、加害教諭に電話をしたところ、加害教諭は、自己の非を認めないばかりか、原告保護者に対して謝罪を要求した。
また、校長は当該事件について原告保護者に対し、教育委員会に報告し適切に対処していると言いながら、実際には報告をしていなかった。さらに、原告保護者の追求を受けて、校長は本件を教育委員会に報告したものの、その内容は原告生徒に責任があり、加害教諭には何ら非がないという虚偽の報告であった。
そのため、校長の発表に基づいた報道がなされ、その報道に接した原告生徒の心はさらに傷ついた。
加害教諭による暴行及び暴言、そして、校長による虚偽報告によって、生原告生徒は精神的身体的に多大な衝撃を受け、PTSDを発症し、登校することが困難になった。
以上