佐賀空港オスプレイ配備反対裁判第6準備書面要約
第1 はじめに
第6準備書面では、一昨年の屋久島沖での墜落事故以降のオスプレイを巡るさまざまなトラブルについてまとめています。
第2 2023(令和5)年11月29日屋久島沖墜落事故
1 事故概要
2023年11月29日、米軍のオスプレイ1機が鹿児島県屋久島沖で墜落し、乗員8人全員が死亡しました。日本国内で発生した米軍オスプレイの事故で死者が出たのは初めてのことです。
陸上自衛隊はオスプレイの飛行を見合わせ、予定されていた目達原駐屯地でのオスプレイによるデモフライトも中止されました。
また、政府が、国内に配備された米軍オスプレイの飛行を安全が確認されるまで中止するよう米側に要請するとともに、屋久島町長、屋久島漁協組合長、鹿児島県知事を訪ね、お詫び及び事故の説明をしています。
しかし、政府の要請を無視して、米軍は、沖縄県に配備されるオスプレイの飛行を継続し、ようやく、同年12月6日になって、事故原因は不明としながらも、全世界でオスプレイの運用を停止しました。
翌年2024年3月8日、米軍はオスプレイの運用停止措置を解除したと発表しました。陸上自衛隊も、3月13日、段階的な運用再開を公表し、オスプレイの飛行を再開しました。
2 事故調査報告書の内容
米軍は、8月1日、事故に関する調査報告書を公表しました。
報告書では、エンジンからの動力をプロップローター(羽)に伝えるギアボックス(プロップローター・ギアボックス、PRGB)内部でギアが破断し、破片が別のギアの間に挟まって歯車が摩耗した結果、プロペラに動力を伝えられなくなったというのです。報告書は、事故原因であるギアの破断について「正確な根本原因を特定することができなかった」と記しています。
3 同様のギアボックスの故障が多数発生していること
8月6日、AP通信は、そのようなギアボックスの故障が過去5年間で60件報告されていたこと、うち少なくとも41件で破損の兆候があったこと、過去10年間で修理のため機体から取り外された変速機が609個に上ることなどを報じています。
第3 飛行再開後のトラブル
1 日米共同統合演習「キーン・ソード25」におけるトラブル
飛行再開の約7か月後、2024年10月23日から同年11月1日まで実施された日米共同統合演習「キーン・ソード25」においてもトラブルが続きました。
10月23日には、千葉県木更津駐屯地所属のオスプレイ1機が鹿児島県・鹿屋航空基地に緊急着陸しました。エンジンの油圧系統の不具合を知らせる注意灯が点灯したため予防着陸したということです。
また、10月27日には、沖縄県与那国駐屯地で、オスプレイが離陸時に機体の一部を損傷しました。
陸上自衛隊は、事故を受けて、原因を究明して対策が取られるまでの間、国内に配備する17機すべてのオスプレイについて、任務飛行を除く飛行を停止しました。
事故の原因は、離陸時に押さなくてはならないスイッチを押し忘れた、というもので、翌月11月14日以降、事故調査結果を踏まえ、飛行が再開されました。
2 米軍オスプレイの奄美空港への2回の緊急着陸
その11月14日とその後の21日には、米軍のオスプレイが奄美空港へ緊急着陸するということがありました。11月24日の着陸の際には、部品交換や安全性の確認のためと称して翌月12月16日まで、約3週間もの期間、空港に待機し続けました。長期間駐機した理由について、九州防衛局は「部品の一部を交換する必要があると米側から説明を受けた」としているだけです。
3 2024年11月20日の米国内での事故
11月20日には、米国内の基地で訓練中のオスプレイが機体内部の部品の金属疲労でエンジンが故障し、墜落寸前の事故を起こしました。
この事故を受けて、12月6日から、米軍のオスプレイは飛行を見合わせ、日本でもその事実が同月10日に報道されてから、陸上自衛隊はオスプレイの運用を停止しました。
12月21日、防衛省は、米国の分析の結果、「一定の飛行時間に満たないPRGB(※筆者注:プロップローター・ギアボックスのこと)において、不具合が発生する潜在的な可能性」があることを公表しました。プロップローター・ギアボックスとはまさに屋久島沖墜落事故で問題となったギアボックスです。その上で、米軍が出した指示に沿った措置を講じ、飛行を再開していくと表明しました。
その後、昨年12月27日から陸上自衛隊はオスプレイの運用を再開しましたが、保有する17機のうち何機が措置を講じる必要のある機体であったかは公表していません。
4 2024年11月25日の米国内での事故
このほか、2024年11月25日には、ホワイトハウスの職員と政府関係者を乗せたオスプレイが飛行前に安全上の懸念が生じ、飛行停止となり、エンジンから炎が出ていたと報道されています。
第4 まとめ
以上のとおり、オスプレイについては、屋久島沖墜落事故以来、運用停止の期間も長く、運用されている間もトラブルが発生し続けています。
調査報道によれば、米軍のオスプレイの事故の多くがエンジンなど機体の設計上の問題に起因していると報じられています。しかし、機種にかかわらず、これほどの短期間で事故を繰り返すオスプレイは、事故原因が何であろうと危険な「鉄の塊」であることに変わりはありません。屋久島沖事故では、結局、根本的な事故原因が明らかとなっていません。米軍が使用するCV22という機種については、米国空軍の中で事故率が最も高いという報告もあります。「輸送機」が「戦闘機」よりも事故率が高いというのです。
また、事故原因の調査や再発防止策がすべて米国頼みになっており、安全性に対して被告が一切責任を負っていないことも明らかとなっています。佐賀県知事は、「米軍と陸自の飛行停止に時差があるのが気になる。日米で連絡をもっと密にして、情報のやり取りがしっかり行われることが大切だ」と述べています。「米政府の求めに応じてオスプレイを唯一導入した日本政府は、事故が起きても製造元や機体の安全性について追及することはない。」と批判されているとおりです。
したがって、このように危険なオスプレイの駐機場所となる本件駐屯地の建設は、平常時においても人格権侵害の危険性があるというべきです。