共謀罪成立に対する福岡県弁護士会会長の声明
「民主主義の根幹である表現の自由の萎縮をもたらす重要法案について実質的な審議を回避し共謀罪法を成立させたことは立憲民主主義の蹂躙というほかない。当会は,今後も国民と手をたずさえ,民主主義の根幹をゆるがしかねない共謀罪法の廃止を求め続けるとともに,共謀罪法により国民の権利が不当に侵害されることのないよう全力を尽くす所存である。」
共謀罪法成立に対する抗議の会長声明
1 本年3月21日に国会に提出されたテロ等準備罪,すなわち,共謀罪を含む組織犯罪処罰法の改正法(以下「共謀罪法」という。)は,6月15日,真摯な議論が全く尽くされないまま強行採決され成立するに至った。
当会では,共謀罪法に関し,2005年(平成17年)8月31日,2015年(平成27年)12月5日及び2017年(平成29年)付会長声明を出し,直近では本年5月24日付「共謀罪法案の廃案を求める決議」において,修正前の共謀罪法における多数の重大な問題点を指摘し,共謀罪の新設に強く反対してきたところである。
2 5月12日になされた,自民,公明両党及び日本維新の合意に基づく共謀罪法の主な修正点は,捜査の適正確保の配慮を求めることを明文化したことにとどまる。適用対象主体及び適用対象犯罪が過度に広範であること,構成要件が不明確であることといった共謀罪法の根本的問題はなんら解決されていない。これら根本的問題を残したままでは捜査機関による恣意的な捜査による人権侵害や,捜査を懸念することによる表現活動等の萎縮が生じると言わざるを得ない。
3 上記修正案が提出された後,5月16日に開かれた衆院法務委員会に招致された5人の参考人のうち,法案に賛成した日本維新の会が招致した参考人も含め,3人もの参考人が法案に反対した。5月18日には,国連人権理事会からプライバシー権に関する特別報告者として任命されたジョセフ・ケナタッチ氏も,安倍首相宛ての書簡にて「プライバシーに関する権利と表現の自由への過度の制限につながる可能性がある。」との懸念を示した。5月22日現在,全国57自治体の議会において,共謀罪法案について反対または慎重な審議を求める意見書が可決・採択されており,国民の多くが共謀罪法に反対またはその必要性に疑念を抱いている状況であった。
4 そうであるのに,6月15日,自民公明両党は「中間報告」によって参院法務委員会での採決を省略するという異例の手段をとり,十分な議論がなされないまま共謀罪法は同日夜に参院本会議で採決され成立するに至った。多くの国民が反対もしくは必要性に疑念を抱く中,民主主義の根幹である表現の自由の萎縮をもたらす重要法案について実質的な審議を回避し共謀罪法を成立させたことは立憲民主主義の蹂躙というほかない。当会は,今後も国民と手をたずさえ,民主主義の根幹をゆるがしかねない共謀罪法の廃止を求め続けるとともに,共謀罪法により国民の権利が不当に侵害されることのないよう全力を尽くす所存である。
2017年(平成29年)6月15日
福岡県弁護士会 会長 作間 功
http://www.fben.jp/suggest/archives/2017/06/post_341.html