熊本市で開催されている第45回全国公害弁護団連絡会議(公害弁連)総会で、よみがえれ!有明訴訟について報告しました
1997年の潮受堤防締切から間もなく19年が経過しようとしています。その間、諫早湾及びその近傍場ばかりでなく有明海全域で海洋環境が悪化し漁業被害が続いています。特に有明海の特産であったタイラギは壊滅。貝類もほぼ消滅。今や補助金を使って国外から稚貝とは言えないほど成長した貝を購入してきて有明海で養殖しているのが実情です。その貝すら有明海に放つと貧酸素のため死滅してしまいます。ノリ養殖も不安定な状況が続いています。
国は、諫早湾干拓潮受堤防の排水門を開放する法的義務を負っているにもかかわらず、未だに判決を守らず、そのため1日あたり90万円の制裁金を支払い続けています。これは安倍総理や農水大臣、農水官僚の金ではなく、私たちの税金です。国が判決を守らないペナルティを私たちが払わされているのです。
今年1月から長崎地裁において、漁業者、農業者、国の三者での和解協議が始まりました。長崎地裁は、開門しないことを前提に、漁業者に金を払う形での和解案を提示しました。
これは漁業者を完全に馬鹿にするものです。漁業者は金が欲しくて14年間もたたかい続けているんじゃありません。かつて宝の海と呼ばれた豊かな有明海を取り戻したいと経済的な苦境に立たされながらも歯を食いしばって頑張っているのです。
有明海の漁業被害は、潮受堤防の工事開始直後から始まり、漁業者達はもう25年にもわたって苦しめられています。かたや開門に反対している農業者達は現実の被害を受けているわけではありません。開門すれば被害を受けるかもしれないとして開門に反対しているのです。被害を受けるかもしれないというのだったら、被害が出ないように万全の対策をすれば済むことです。被害が出ない方法があるのに、現実に被害を受け続けている漁業者を犠牲にして漫然と開門に反対し続ける態度は極めて不誠実であるといわざるを得ません。長年の被害に苦しみながらも、同じ一次産業である農業者には同じ思いはさせてはいけないと、農業者のための対策を国に求め続ける漁業者の強さと優しさにこそ未来を感じます。農業と漁業は対立するものではありません。両方が相まって発展することが可能なはずです。その道を示すのが裁判所の役割ですし、政治の役割です。