農水省との意見交換
出席国会議員:仁比参議院議員、真島衆議院議員、畠山衆議院議員
漁民:室田、平方
弁護団:馬奈木、堀、吉野、後藤
堀:長崎地裁和解勧告について、これまでの経緯から我々が承服できるものではないことは農水省も知っている通り。国の声が全然聞こえてこない。国はどのような姿勢で和解協議に臨んだのか。国は3-2開門であれば、農業者に被害が出ないように万全の対策の上取り組むというのがこれまでの姿勢だったはず。
農水省:3者が長崎地裁で揃った。3者が揃うことによって問題解決に進むことができる。国は、判決が確定した段階から、長崎県に対して3-2開門に向けた取り組みをしてきた。相反する司法判断で板挟みになって身動きが取れなくなっていた。長崎地裁の和解勧告はひとつの方向性として、それを持って解決ができるのであれば、国としても努力していく。和解協議の場ではこのような国のスタンス
馬奈木:何とおっしゃっているの。
農水省:裁判所の言うとおりに従うということではなく、裁判所の方向性に沿って。
馬奈木:国は受け身のようだが、国は積極的に動いているでしょう。佐賀県知事にまで面会を求め。
農水省:佐賀県では副知事に会った。福岡県、長崎県にも行った。和解勧告が出ていること、和解協議について、状況を説明した。
堀:何を説明するの。和解勧告は紙で出ているでしょう。
農水省:状況を説明した。
馬奈木:佐賀の知事に対して、開門と言うな、事態を黙って見守っておけと言ったでしょう。佐賀県の従来の立場を言わないでくれということでしょう。国が佐賀県に圧力をかけに来たと思われている。国は3-2開門をしようとして、予算措置も講じてきた。今度の和解勧告でこの方針をやめたんですか。
農水省:国が置かれた立場は変わっていない。開門義務と開門差し止め義務の板挟みにあるのは変わっていない。
馬奈木:3-2開門を行うという旗はおろしていないんですね。
農水省:開門することになった場合に備えて予算を講じています。
馬奈木:福岡高裁では、3-2開門であれば農業被害は防げると国は抗告理由書で主張しているが、それは変わっていないのか。
農水省:予測し得ないことが起これば補償する。
堀:3-2開門なら被害発生は防げます。それでも予測不可能な事態が生じればきちんと補償しますということでしょう。
馬奈木:さらに被害防止対策の要望が出れば検討していくということですよね。
農水省:現場の方から要望が出れば真摯に受け止める。
馬奈木:それは和解協議の場でも言っていただけるんだすよね。
農水省:裁判所の進行に応じて…。
堀:和解協議の場で言うんですか。
馬奈木:私達は、裁判所にこれまで国との間で確認できたことをきちんと伝えるが、まさか、国は考えが変わったとは言いませんよね。開門に対しては私達と同じスタンスであると問われればyesと言うんですか。
農水省:違うことを言うとは言いませんが…。
堀:yesですか。端的に答えてください。
農水省:今回…
堀:まずyesかどうかをきちんと伝えてください。
農水省:国のスタンスは変わっていません。
堀:本来は国が一番責任があって、和解協議についてもイニシアチブを取るべきなんですよ。保全異議抗告理由書は昨年11月に出てますよ。それを何で長崎地裁で弁論再開して提出しないのか。そうでないと長崎地裁は正しい観点に立って判断できないではないか。あなたたちがやらないのなら、我々でやりますよ。
農水省:長崎地裁は弁論は終結して和解協議に至っているから、和解協議を大事に、長崎地裁の進行を踏まえながらと考えている。
堀:手続きにこだわるんでなく、国がこうすれば被害が防げると言っていることをきちんと長崎地裁に伝えない。それを伝えたからといって和解協議に抵抗するということにはならないでしょう。むしろそれを言わないことの弊害が大きい。
馬奈木:長崎地裁は和解勧告の中で、結論も出ていないのに、国が敗訴し開門差し止めが認容され確定するといい、他裁判の執行力についてまで言及しているが、国としてこんなことを言われて、何も言わないのか。私達には意見があります、高裁にはすでに申しましたということをなぜ長崎地裁に言わないか。国が言わないから、長崎地裁はこんな和解勧告を出すんだ。
堀:そこを放置しているから無気力、馴れ合いなんて言われる。間違った前提に立った和解協議では困りますと何で言えないのか。
農水省:ようやく始まった和解協議を大事にしたい。
馬奈木:和解協議を進めることと、自分の考えをきちんと伝えることは矛盾しないでしょう。
堀:福岡高裁と長崎地裁が違う前提に立つことになる。
農水省:裁判所が和解協議のステージで話を始めたところなので…。
馬奈木:それも間違った事実認定に立って。長崎地裁は和解の前提として、あなた方をまけさせそれが最高裁まで確定すると言っている。何で違うと言わないのか。
農水省:抗告理由書を提出しないと言っているんではなく、今はタイミングを見ているところ。
馬奈木:あなた方が今はしないと言うのなら、私達から出します。
堀:裁判所の舵取りに任せるというが、舵取りをしている人が間違った認識であればそれを正さなきゃ。
馬奈木:私達も和解協議を大事にしたいと思っている。だからこそ、間違っているところは正して、きちんとした認識に立って欲しいと思っている。大事にするからこそ、先日の和解協議で席を立たなかった。それぞれの立場を裁判所にきちんと認識にしてもらった上であるべき方向に向かうのが和解。
仁比:長崎地裁が示した開門しない形での解決方法ではいたずらに紛争が混乱することを農水省も知っているでしょう。農水省としては確定判決によって背負った開門義務は揺らぎません。それなら、開門に不安を覚える方に被害が出ないように万全な対策で臨むと示すべきではないか。
農水省:裁判所が総合的に物事を勘案していくものと思うので、国の方から右がいいです、左がいいですというのは…。
仁比:右か左かではないんですよ。右も左も両立できますと、国がちゃんと言うこと。それを国が言わないから、裁判所はありえないような和解勧告を出す。
農水省:開ける開けないの真ん中はないという状況で、3-2開門の対策をきちんとやっていきますというのはこれまでも国は言ってきましたし、これからも言います。
仁比:発展していく方向にあるんですか。和解協議の第1回を見る限り発展していく方向にはないことがはっきりしたのではないか。巨額の税金を使って被害が出ない3-2開門の対策を考えてきた。それをきちんと裁判所に示すべきではないか。もし本当に解決に向けて発展していきたいと思うのであれば、これ以上、長崎地裁に恥をかかせちゃいかんでしょう。長崎地裁に、この和解勧告では到底解決できないことをきちんと示し、裁判所が言っている論点について国が12年間やってきたことをきちんと伝えるべきではきではないか。
農水省:そういうお考えがあるということはきちんと受け止める。
馬奈木:国の積極的な提案が見えてこない。裁判所はプレーヤーではなくアンパイヤなんだよ。
仁比:夏を越せないという漁業者の窮状は深刻。なのに後5年も10年もこの争いを続けるというんじゃ。諫早湾干拓をめぐる長年の状況の上に今がある。その現状をきちんと裁判所に示すこと。何よる事業をやってきた人なんだから。責任を持って3/1の前に示すこと。国は受け身の態度を改めるべき。
農水省:仁比先生のお考えはしっかり受け止めました。
馬奈木:二者択一どちらかしかないように裁判所も議論する。再生事業をやることは大いに結構ですよ。再生事業、開門、両方やって良いんじゃないですか。両方相まって効果がある。それと農業被害を防ぐ対策。やれるでしょう。開門に関係なくやるべきでしょう。開門云々に関わらず水に困っている人たちにはきちんと対策を取るべきではないか。どっちか選べとなると選ばれなかった方は反発する。当たり前でしょう。どっちもやれば良いじゃないですか。あなた方は、平成16年から3年間をめどに調整池からの排水の抜本的な改善すると言っていたが、今は平成28年ですよ。海水を入れれば一発で水質は改善する。開門しないで莫大な金を排水対策に使うくらいなら開門して、その金は農業被害防止対策に使えば良いじゃないか。
農水省:それぞれの考え方がある中で、これからどういう形で進めるか。
馬奈木:国の考え方を示してください。裁判所に従いますじゃ。
農水省:それぞれの考え方がある中で、国は訴訟の中で和解のステージに入ってので接点が見えるか探っていきたい。
堀:そのために国は何をするのか。
農水省:国としてできることを。
堀:だから何をするというのか。新しいステージで具体的に何をしようとしているのか。
馬奈木:国としての案は出てこないのか。
農水省:その中で国としてできることを。問題解決に向けてできることをしていきます。
馬奈木:国は何をするんですか。
農水省:今申し上げたとおりです。
馬奈木:何も案がなく、裁判所が示すままに身を任せるんですか。我々は、裁判所に案を作ってもらおうなどと思っていない。国と我々の間で良く協議して一定の案を作って裁判所に示す。国は裁判所が示した案に対してどう思うんですか。国の意見は言うべきでないか。
農水省:我々としても国としてできることについては対応して検討し、言うべきことは言うと思っている。
馬奈木:国が言ってくれるのなら、我々は賛成すべきところはちゃんと賛成しますよ。この場で国の考えを示さないというのは、我々には国の考えを示す必要がないと思っているのか。
室田:長崎県島原半島の海苔漁師です。昨年、根付はうまく行きました。しかし、11月に赤潮が発生し芽流れが起こった。一昨年と同じ状況。網に一昨年は白いもの、昨年は茶色いものが付着した。これが何かわ分からないがこれが海苔芽が付着するのを邪魔している。南部排水門からの排水が多く調整池からの水が島原半島沿いに流れているのではないか。秋芽がこんな状態なら冷凍網も期待できない。夏を越せそうもないというのが島原半島の状況。
農水省:この写真は秋芽ですか。
室田:はい。今年の1月に撮ったものです。昨年12月末まで稼働できたのは15経営体の内3軒だけ。
農水省:有明、島原、国見、瑞穂がそれぞれこんな状態ですか。
室田:そうです。国見地区でもさすがに組合長も「堪えるね。機械の修理代も出らん」と嘆いている。各漁協嘆いている。
平方:佐賀県大浦から来たタイラギ漁師。タイラギ漁の許可が下りない状態がずっと続いている。短期開門の時一時的に回復したが、門を閉めたら再び立ち枯れ。現在4期連続で休漁。稚貝も立っていないので来季も休漁だろう。イイダコや芝海老でなんとか凌いできたが、一昨年から獲れなくなり、そのためカニ網に移ったが、それも取れない。非常に厳しい状況。他に代わるものは取れていない。船は繋ぎっぱなし。アサリも取れていない。今年の夏を乗り切れば来季のアサリが期待できれば、例年通りなら夏場にアサリは死んでしまう。クラゲを獲って何とか食いつないでいるが、いつまで取れるか不安。裁判所が再生事業でやっていけるんじゃないかと提案があったが、これは国が裁判所に言っているんじゃないかと思っている。潮受堤防締め切り以降、ずっと再生事業に取り組んできたが効果がない。貝類がほとんど取れていない大変な状況。裁判所は養殖技術が進んでいるというが、気象状況に強く左右され確立されているわけじゃない。タイラギの垂下式養殖は経費ばかりがかかり採算が取れない。アサリは垂下式にすると付着物で立派に成長はしない。養殖技術として成り立つものではない。再生事業で海が良くなるなどと裁判所が言うのは心外。農水省は農漁共存を進めるのが仕事。開門して農業に被害が出ないようにできるはずだ。
農水省:被害が出ないような物理的な対策を示してきた。それでも農業者の方が不安だというのなら、要望を聞いていきたい。クラゲは夏だけですか。
平方:夏場を中心に11月くらいまで。
農水省:芝海老はルール作りがされているというが。
平方:ルール作りをしようとしてきたが、芝海老がいなくなったのでその必要もなくなった。
岩井:今年は、長洲から南の熊本の海苔が非常に悪い。また南部排水門からの大量排水で島原半島沿いがダメになっている。調整池からの排水が原因と思われる。水産庁とも対策を協議して欲しい。