よみがえれ!有明海・院内学習会(衆議院第2議員会館第5会議室)
出席した国会議員:赤嶺政賢衆議院議員、大串博志衆議院議員、紙智子参議院議員、仁比聡平参議院議員、真島省三衆議院議員、田村貴昭衆議院議員、畠山和也衆議院議員、佐々木隆博衆議院議員(秘書)
1 有明海の状況
(1) 室田さん(長崎県・海苔漁師)
今季、長崎県の海苔漁業は壊滅と言ってもよい状態。
網に白い物質が付着して、芽が流れてしまい、網に海苔が着かない。調整池からの排水が原因ではないか。冷凍網も同じ状況と思われる。このままでは夏を越せるか。
(2) 平方(佐賀県・タイラギ漁師)
タイラギは、今季もまた休漁。稚貝も育っていないので来季も休漁になる模様。
芝海老もタコも獲れていない。
カニも8杯入れて1日1匹2匹しか獲れない状況。燃料代にもならないので船を毎日出すこともできない。車エビも経費を引くと何も残らない。クラゲを獲って何とか生活費にしている。クラゲもいつまでいるか分からない。
(3)海苔漁業の状況
有明海東部で赤腐病が蔓延。量も少ないし質も悪いが、量が取れていないことから単価が高くなったことで凌いでいる。
佐賀県西部(鹿島・大浦)はこれまでと比べると取れている。北部排水門からの排水が減ったからと言われている。
その分、南部排水門からの排水が増え、室田さんの島原半島沿いや、熊本県長洲の海苔漁業が壊滅状態に追い込まれている。
2 開門に向けた課題(馬奈木昭雄弁護団長)
長崎地裁と福岡高裁が時を同じくして和解勧告。私達としては和解による解決は大歓迎。ただし、最初に開門非開門の結論を出せば、いずれかが席を立つことになり和解協議にならない。結論を示すのではなく、開門非開門の論点を整理することが重要だと裁判所には再三伝えていた。
それにもかかわらず、長崎地裁は開門はしないという結論を示し、漁業者に金を払うことで解決しようとした。裁判所は、開門でも非開門でもない第三の道と言っているが、開門しないという結論に変わりはない。しかも、これまで12年にわたって取り組んできて効果が出ていない有明海再生策を第三の道と言う。
開門したらどのような被害が出るのか。調整池が海水化することで農業用水確保の問題が出てくるが、諫早干拓地や後背地では別途代替水源が確保されていて問題は生じないこと、ごく一部の背後地に問題が残れるがここも別途対策をとれば農業用水は確保できること。これまで漁業者達が求めてきた制限開門の方法によれば、潮風害や塩害も防げる。つまり、長崎地裁の決定によっても開門による被害は生じないことは明らかになっているし、国も対策を取るので被害が出ないと言っている。
それなのに、長崎地裁自信が開門しないという結論を示した。
長崎地裁の決定によっても、対策を取らないことで万が一被害が出るとしても、背後地のブロッコリー栽培4名、アスパラガス1名、タマネギ1名に塩害の可能性が残るが、対策を取れば被害は防げる。
現に被害が出ている漁業者を犠牲にしてまで開門しないという結論にこだわるべきではない。
3 国会に期待すること(意見交換)
大串:確定判決を覆すような和解勧告を裁判所が出すというのは異常。この国は司法制度までおかしくなってきている。開門し有明海の再生まで全力を尽くす。
仁比:①開門による被害というがそれは防げないのか、②開門に代わる対策というがこれまでどの程度の成果があったのか、この2点を国会で明らかにしていくことが焦点。長崎地裁の不当和解勧告の背景には板挟みになっていると主張する国の姿勢がある。国が調整池に頼らない農漁共存の道をきちんと示すことが重要。開門を命じた確定判決は消えない。国は制裁金を払い続けなければならない。
真島:前向きな和解協議を期待していたが、司法の場で大きな反動があることに腹を固めなければという決意。国会の場でも開門に向けて国を動かしていかなければ。
畠山:国は板挾みなどというが、一番苦しんでいるのは現場の漁師さん。
田村:夏が越せないという漁業者の皆さんの言葉を胸に、国会で論戦をしていく。事実と科学的知見に基づいて被害が出ないことをきちんと追求していく。さらには、現在の排水による被害についても農水省を追求していく。
紙:確定判決によって開門しなければならないのに、このような和解勧告が出たことに驚いている。国会の場で、開門をしない有明海済世策は効果がなかったことを追求していく。
赤嶺:確定判決を棚上げにする和解案に腹を立てている。辺野古でも裁判所による和解案が出たが、これも現場の実情をまったく分かっていない。沖縄の辺野古では機動隊を導入してまで工事を強行しているのに、諫早では国は開門義務を負っているのに無気力。
中杉公害弁連幹事長:水門を開けることに何も問題がないのに、何ら合理性がないところで国は抵抗している。国民にはこの国の抵抗はまったく理解できない。国会の中と私達の両輪になって頑張っていく。