今年3月に開催した青年法律家協会第17回人権研究交流集会「理不尽な校則NO!-人権の視点で子どもを取り巻く環境を考える-」を報告します。

「感動の嵐が吹き荒れました。いやいや大げさではありません。こんなにスカッとしたパネルディスカッション、初めてでした」

これは、分科会に参加した方がブログに投稿したコメントです。

本分科会は、圧倒的に一般の方の参加が多く、とりわけ中学生の保護者や不登校支援に携わる方、教職員の姿が見られました。現役の中学生や。今春中学校に進学する子ども達も参加しました。

以下、分科会に参加した方のブログを引用し報告します。

「前半は、内田良准教授(名古屋大学大学院)の基調講演『らしさ』という病―学校のルール変革の時―。直前まで、資料を作成していた内田さん。それほど校則問題が日々世間を賑わしています。体操服の下の下着着用禁止や、下着の色まで決める、そんな理不尽な校則がなぜ存在するのか、何が問題なのか、じっくりお話しいただきました。校則問題が人権侵害の可能性があるということは後藤富和弁護士も指摘していました。こんな大きな問題を抱えながらなぜ校則は変われないのでしょう。2000年以降、校則は『下着の色』『地毛証明書』『スカート丈』など、生徒の個性の隅々まで抑圧するようになっていきました。さらに問題なのは、校則の理不尽さに先生自身が気づいていない、もしくはおかしいと思っても声を上げられないということ。校則が異常なまでに細分化していった背景には、社会の学校依存体質と、それが引き起こす教員の過重労働があります。子どもの問題行動(それも取るに足らないようなこと)の責任が、家庭ではなく学校に求められる現実。学校が、先回りして予防的に決まりを作っていった結果、理不尽な校則ができあがる。生徒も保護者も教員も、その細かな規則に疲弊するという、負のスパイラル。しかもここに『悪意』はありません。教員は『子どもたちを守るため』に『子どもたちのために良かれと思って』校則による人権侵害をしているのです。こう考えると、理不尽な校則ができた責任の一端は私たちにもあることがわかります。学校に全てを背負わせないこと。教員の長時間労働を当然と思わないこと。教育現場が広く社会に開かれることが大切なのだと思いました。『らしさ』ってなんでしょうか。『先生らしさ』が先生を苦しめています。『中学生らしさ』『高校生らしさ』が子どもたちを苦しめています。集団の『らしさ』ではなく『自分らしさ』でいいのではないでしょうか。『世論が校則を変えていく』、『学校に市民社会のルールを届ける』、私たちは無力ではないのです」

「第2部は、内田さんと、森恵美教諭(福岡市近郊公立中学校生活指導主幹)、そして後藤弁護士によるパネルディスカッション。森さんの学校では、今年度校則の大幅な見直しを行いました。生活指導教員で話し合い、管理職をはじめすべての教員の理解を得る手順を踏んでいきました。合理的説明がつかない校則は、緩めたり、なくしたり。例えば、男女別の髪型規制や細かい規定(ツーブロック・ポニーテール禁止など)は廃止。その結果、長髪を後ろで結ぶ男子も現れました。でも、校則を緩めたら『荒れる』ということはなく『意外に何も起こらないね』と先生たちは拍子抜け。逆に、細かい規則をなくしたことで、先生たちは余計な指導をしなくてよくなり、生徒たちに向き合う時間ができるわけです。奇抜な格好をした生徒がいても、やみくもに叱るのではなく、なぜそういう格好をしているのか生徒に話を聴くこと。先回りして禁止するのではなく、生徒を見守るという意識改革を行ったわけです。今後は生徒自らが校則について考え、さらなる改革を進めていくとのこと。この変化を受け、周辺の公立中学校も変わろうとしています。『生活指導というのは、生徒と教師の間に信頼関係がなければならないと思うのです』と力強く言われる森さん。ここで後藤さんが『先頭に立ってきた森さんが転勤されたらまた元に戻るんじゃないですか?』」と意地悪な質問。『そんなことはないと思います』と森さん。『トップダウンで変えたわけではなく、教員みんなが考えての改革ですから』と。質問した後藤さんは感極まっていました。福岡県で、こんな公立中学校が出てきているなんて、私も感涙でした。今、学校の中からも変化が生まれています。先生自ら、不合理な校則の見直しに動いている現状を知り、会場から何度も感嘆の声が上がりました。公立中学校の元PTA会長として標準服見直しに取り組み、不合理な校則をなくそうと人権の面から声をあげた後藤さん。社会の声を学校に届けよう、世論で学校を変えていこうとお話しされた内田さん。学校の内部から、教師と生徒の意識改革を進める森さん。それぞれの立場から、子どもたちが楽しく学校生活が送れる環境作りが提案されました。3つのピースがぴたりとはまったパネルディスカッションでした。きっと、これから明るい方向に進んでいくんだ、できるはずだと心が軽やかになりました」(以上不登校支援団体「咲くふぁ福岡」のブログから引用)

このシンポジウムは福岡の教育現場に大きな影響を与え、今、福岡市の中学校では校則の見直しが行われています。

#校則

http://www.seihokyo.jp/html/katsudou-bengaku.html#jinken