安保法制違憲国賠訴訟・福岡地裁判決に対する抗議声明

2022年4月15日

安保法制違憲訴訟福岡弁護団

 本日、福岡地方裁判所第3民事部(松葉佐隆之裁判長)は、安保法制違憲福岡国賠訴訟について、原告らの請求を棄却する不当な判決を言渡した。

 判決は、憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使を容認した2014年7月1日の閣議決定と、これを基礎として国会で可決したとされた、憲法に違反する新安保法制について、いずれも憲法判断を回避した。

 そして、原告らの平和的生存権、人格権、憲法改正・決定権について、いずれも侵害されていないと判示した。しかし、これらの権利は、戦争が始まり、回復不能な肉体的・物質的損害が甚大かつ広範に発生して初めて侵害されるのではないし、裁判所がその時点で権利侵害を認定したのでは遅い。ロシアのウクライナ侵攻を目の当たりにして、何と空疎な判断であろうかとの思いを禁じ得ない。

 確かに、現憲法は法令等の違憲性を抽象的に判断することを原則として回避すべきであるとする付随的審査制を採用しているとするのが最高裁の判例とするところではある。

 しかし、本件は、最高裁がその例外とする、法令等が「一見極めて明白に違憲無効」である場合に該当する。そうである以上、裁判所は憲法適合性の判断に踏み込むべきであった。

 にもかかわらず憲法判断を回避した判決の姿勢は、三権分立の下、政治部門(立法、行政)の暴走を抑止するという、憲法によって司法部門たる裁判所に課された重要な使命を自ら放擲するものである。

 私たちはこのように不当な判決に屈しない。

 日本国憲法が崇高な理念として掲げる国際平和の実現に向けて、今後とも全国の安保法制違憲訴訟の当事者並びに弁護団、心ある多くの市民とともに、歩みを進める決意をここに表明する。

以上