本日、佐賀地裁で開かれた原発なくそう!九州玄海訴訟口頭弁論において「準備書面104〜再生可能エネルギーが、脱炭素、エネルギー安定供給、経済成長をもたらす〜」を提出し以下の口頭要約を行いました。

「準備書面104〜再生可能エネルギーが、脱炭素、エネルギー安定供給、経済成長をもたらす〜」の全文はこちら↓

準備書面104(web版)

第1 はじめに

「電力ひっ迫」という言葉を最近良く耳にします。

多くの方は、電気が足りていないと思うのではないでしょうか。

しかし、九州では、電気が足りないのでなく、むしろ余り過ぎています。

九州は日照時間が長く太陽光発電に適した地域です。地熱発電も豊富で、再生可能エネルギーでたくさんの電気を発電することができます。他方で市民の省エネ努力によって毎年消費電力はどんどん減少しています。電気の需要は減る一方、再エネ発電量は増えているのです。

でも、九州電力は、再エネが増えているのに原発4基を稼働させています。

その結果、電気が余るのです。

電気が余って需要と供給のバランスが取れなくなると大規模停電を招いてしまいます。だから、発電量を減らさなくてはなりません。

ご存知の通り原発は基本的に出力調整ができません。

だから、九州電力は、原発ではなく、再生可能エネルギーの方を止めています。これが再エネ出力抑制と呼ばれるものです。

九州電力のホームページを確認すると、今週末も電気が余ることが予想されるとして再エネ出力抑制の指示が出ています。

九州では、原発4基を稼働させて、原発4基分の再生可能エネルギーを捨てていると言われています。火力発電に換算すると約200億円分の電気を捨てているとの指摘もあります。

国は、カーボンニュートラル(脱炭素社会)を実現するためグリーントランスフォーメーション(GX)を進めています。

それなのに、再生可能エネルギーを捨てているのです。

第2 GX方針

1 GX方針では、脱炭素社会実現に向けた政策の中心に原発を据え、原発の再稼働、運転期間延長、新増設によって、2030年度の電源構成に占める原子力の比率を20〜22%に高めるとしています。

2 このGX方針に対し様々な問題点が指摘されています。原発の運転年数を伸ばすことによる原発事故リスクや、老朽化した原発の不安定さやコストの問題、放射性廃棄物の発生、革新炉開発の不確実性などです。

このような問題を抱える原発に頼るのではなく、脱炭素社会の実現のためには、再生可能エネルギーを推進することが有効です。そして、原発に依存しない脱炭素化を推進することが産業の新陳代謝を促し、日本経済の競争力を高めるといわれています。

第3 エネルギーの安定供給

1 なぜ、電気が余って再エネを捨てるようなことになったのでしょう。

それは、国が原発をベースロード電源とする考えを崩さなかったからです。

国が原発に固執し、再エネを中心とした電力の安定供給と脱炭素社会の実現に真摯に向き合ってこなかった結果、電気が余り電力供給を不安定にしました。せっかく発電した電気を捨てなければならないのでは安心して再エネ事業を継続することも新規に参入することもできず、再エネ拡大を阻害する結果を招いています。

ウクライナ危機などの影響で電気代が高騰する中、燃料費がかからずにタダで発電でき、原料を輸入に頼らない純国産の再生可能エネルギーを捨て続けることに、市民からは「もったいない」との声があがっています。

九州電力は「春や秋の休日やゴールデンウイーク」などの需要の少ない日に太陽光からの発電量が需要を上回るケースが出てきたと説明しています。しかし、実際には、春や秋だけでなく夏や冬も、休日だけでなく平日も電気が余り再生可能エネルギーの出力抑制をしなければならない状況です。

今年度だけを見ても、4月には24日間、5月は26日間、6月は23日間も再エネ出力抑制の前日指示が出ています。

2 エネルギーの安定供給のために有効なこと

原料費無料で純国産、CO2を排出しない再生可能エネルギーを無駄にせず、今後も推進していくためには、出力制御が困難な原発をベースロード電源と位置づけるのをやめるべきです。そのためにも、送電網の増強や電気を貯めることが有効です。

九州電力管内では電気が余り再エネ出力抑制をしている一方で、他の地域では電力不足に見舞われるということがあります。逆のケースもあります。

このような場合、電気が余っている地域から電気が不足している地域に電気を融通できれば、電気を捨てずに有効活用することができます。

そのためには大手電力会社間の送電網の増強が必要です。

しかし、九州電力は、他の大手電力会社とカルテルを結んで情報漏洩を行うなど、電力会社間の電力融通を阻害する行動に出ています。

また、電気が余るのであれば、それを貯めて電気が不足する時間帯に使用すればよいと素人の私は考えます。こんな当たり前のことがこれまでできなかったのは、蓄電池の性能とコストの問題があったからと言われています

しかし、この間の蓄電池の技術革新は目覚ましく、従来は不可能と言われていたレベルでの蓄電も可能となっています。

国と九州電力の決断次第で、原発に頼らない再生可能エネルギーを中心としたエネルギーシステムを構築することは十分可能なのです。

第4 気候変動対策(脱炭素社会の実現)

国は、気候変動対策として、原発の再稼働、運転期間延長、新増設に取り組むとしています。

しかし、原発自体が気候変動対策を遅らせる原因となっています。

原発をベースロード電源とすることで、電気の供給過多の状態になるのは避けられず、再生可能エネルギーの受け入れを拒否しなければならなくなります。その結果、再生可能エネルギー事業の経営は極めて不安定となり、再エネ事業から撤退する業者が現れ、新規参入の障害にもなります。

原発に多額の予算を使うよりも、省エネと再生可能エネルギー推進のための送電網の増強や蓄電池の開発設置などに予算を使うべきです。

また、原発は、点検、トラブル、不祥事、裁判、自然災害などで計画通りの運転ができない事態に度々見舞われます。その度に、火力発電に依存することとなり二酸化炭素を排出することとなります。

さらには、使用済み核燃料の冷却や、温排水によって原発自体が温暖化を直接進める結果となっています。

これまで太陽光を始めとする再生可能エネルギーについては、コストの面や安定供給ができないとの課題が指摘されてきました。

この内、コストについては、2010年の時点では、太陽光発電は原子力発電のおよそ2.5倍のコストがかかるといわれていました。これが2013年の時点で逆転し、それ以降、原発の発電コストは高くなる一方で、太陽光発電は急激に安くなっており、2020年の時点では、太陽光は原発の1/4の低コストで発電が可能となっています。

不安定という点については、確かに、太陽光は夜間や雨天の日はほとんど発電できません。しかし、この点は、蓄電池の活用と送電網の強化によって再エネでも安定的に電気を供給することが可能となります。そして、大規模な設備を準備せずとも、例えば、電気自動車を蓄電池として活用することで、昼間発電した電気を電気自動車に貯めて、夜間に電気自動車から家庭に電気を配送するといった家庭内で電気を循環させることも十分可能となります。

第5 脱炭素社会の中での経済成長

国際社会が脱炭素を目指す中で、太陽光パネルや蓄電池、電気自動車といった新しい技術が生まれ進歩をつづけています。

太陽光パネルの分野では、2004年の時点で世界シェアの52%を日本企業が占めていました。しかし、2020年には世界シェアの67%を中国が占め、日本企業のシェアは1%以下にまで落ち込んでいます。

電気自動車については、世界で初めて量産化に成功したのは日産自動車と三菱自動車です。太陽光と併用することで安定的に家庭に電気を供給することが可能となるシステムです。福島原発事故直後、テスラ社CEOのイーロン・マスク氏が福島県相馬市に太陽光システムを寄贈しました。原発事故後、日本社会は再生可能エネルギーへと大きく転換するものと思われました。

しかし、わが国のエネルギー政策は原発へ回帰し、今や電気自動車の分野でも世界の潮流から大きく遅れてしまいました。

他方、福島の事故を受け原発政策を転換したドイツでは、今年4月、最後に稼働していた3基の原発を停止させ脱原発を実現しました。それと同時に、再生可能エネルギー促進に積極的に取り組み、電力消費量の43%を再エネが占めるまでになりました。経済成長も著しく今年度名目GDPで日本を追い抜くと言われています。

国と九州電力ら大手電力会社が原発再稼働に血眼になり、再エネ普及に不可欠な太陽光パネルや蓄電池などの技術革新や資金投入を怠ったツケが、今の日本の産業の停滞を招いているといっても言い過ぎではないでしょう。

第6 まとめ

脱原発を進め再生可能エネルギーに大胆にシフトすることが、気候変動対策となるばかりか日本経済復活のきっかけとなるということを真剣に考えるべきです。

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